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ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男

  • 4月26日
  • 読了時間: 2分

=2時間8分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で5月9日(金)から公開

(C) 2023 Zeitsprung Pictures GmbH

ナチスの宣伝大臣 その戦略と半生描く

 ヒトラーの腹心で、宣伝大臣としてプロパガンダ政策を担ったヨーゼフ・ゲッベルス。「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」は、プロパガンダの天才と呼ばれたゲッベルスが演説やラジオ、映画などのメディアを駆使して国民を扇動し、いかにヒトラー政権を拡大させたのか、その戦略と半生を描く。


 1938年3月、ナチス・ドイツに併合されたオーストリア・ウィーン。宣伝大臣のゲッベルス(ロベルト・シュタットローバー)は、ヒトラー(フリッツ・カール)を出迎えるための演出に余念がない。さらにベルリンでの凱旋(がいせん)パレードでは、完璧にナチス一色に染められた街で、全市民が熱狂して出迎え、ヒトラーを大満足させた。戦争をさらに拡大しユダヤ人の抹殺を願うヒトラーの野望に応えるために、国民にユダヤ人への憎悪をかき立てる戦略に乗り出す。


 ゲッベルスがどのように周囲を扇動してきたのか。なぜドイツ人はヒトラーに従い、何百万人ものユダヤ人の命を奪ったホロコーストを食い止めることができなかったのか。長い間抱えていた疑念をフィクションとして脚本を手掛けたのはヨアヒム・A・ラング監督。この作品の見どころは、これまでドキュメンタリーとして目にしてきた歴史記録映像が、ゲッベルスや宣伝家たちによって演出されたまさに映画だったということ。ゲッベルスはヒトラーを英雄に仕立て上げるため、プロデューサーとしてニュース映像の編集にも細かい指示を下していた。


 演説の構想を自らヒトラーになりきり、鏡の前で綿密にリハーサル。コピーのように熱弁を振るうヒトラー。総統の関心を得るためゲッベルスはより過激な方向に歩みだす。


 ラング監督は何十年もかけてあらゆる資料を調べあげ、ゲッベルスが製作した映像に込められた意図に注意を払い、新たな真実に向き合う。フィクションと現実を対比させた映像から見えてきたものの恐ろしさ。ゲッベルスは言う。「大きなうそも繰り返せば国民は信じるようになる」と。その言葉が戦後80年たった現在もなお通じることに背筋が寒くなる。


 ネット社会に蔓延(まんえん)するフェイクニュース。うそが拡散され真実が見えにくくなっている今だからこそ、この映画が世界に警鐘をならす。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2025年4月26日号掲載

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