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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

=3時間26分

 長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

【画像提供 Apple】

先住民族の利権狙う 白人の陰謀と事件

 アメリカ大陸へ移民した白人たちから住み慣れた土地を追い払われたネーティブアメリカン(先住民族)。その中で、オセージ族は、新たな居住地で石油を発掘し、白人の使用人を持つほどにまで裕福になった。「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」は、1920年代に起きたオセージ族の連続怪死事件を題材にマーティン・スコセッシ監督が描いた重厚な犯罪サスペンス映画だ。

 第1次世界大戦の帰還兵、アーネスト(レオナルド・ディカプリオ)は、叔父のウィリアム(ロバート・デ・ニーロ)を訪ねて、オセージ族が暮らすオクラホマ州の町にやってきた。運転手として働き始めたアーネストは、美しく利発なオセージ族の女性モーリーと出会い、互いに好意を抱き結婚する。だがモーリーの家族が次々と亡くなり、周囲でも何十人もが不可解な死を遂げていた。さらに真相究明を訴えるモーリーにも魔の手が迫っていた。

 物語のオープニングで、首長が「白い人々に学ぶようになる」という未来を予言する言葉が流れる。だが強欲な白人たちが狙うのは先住民族しか持っていない利権。そのために結婚して子どもをもうけ、相手の命と共に奪うという陰謀が実行されていた。

 真実の愛かそれとも欲か。財産目当てと薄々感じながらも男を愛せずにいられない、その女心が切ない。モーリー役のリリー・グラッドストーンは先住民族の血をひく女優で、褐色の肌とつややかな黒髪に魅了される。

 紳士的な振る舞いで周囲から信頼を得る一方、腹黒さを隠し持つウィリアム役のデニーロ。妻を愛しながらも叔父にそそのかされ苦悩するアーネスト役のディカプリオ。共に複雑な人物を演じた2人の演技派の共演はさすがだ。

 映画の製作に当たり、スコセッシ監督はオセージ族の首長の協力を得て、実際の居住地で撮影。彼らが身にまとうモダンさを感じる伝統的な柄の衣装や音楽など、当時の暮らしや文化を再現している。

歴史の闇に葬られた先住民族への人種差別や虐殺に真正面から向き合った作品だ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年10月28日号掲載

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