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カンボジアの子どもたちの健康意識が向上するように啓発絵本を制作

高3・大西彩桜さん

11月4日、長野市内で開かれたトークイベント「意外と知らないカンボジア」で話す大西さん

大学生らと団体つくりCFで資金集め 来年2月に絵本届けるため渡航予定

 通信制高校3年の大西彩桜(さくら)さん(18)=平林=が、カンボジアの貧困地域の子どもたちの健康意識向上を目的とした啓発絵本の制作に取り組んでいる。日本人大学生ら8人と団体「Aspilation(アスピレーション)」をつくり、共同作業で絵本はほぼ完成。来年2月、絵本を届けるため、カンボジアに1カ月間渡航する予定だ。

 大西さんは、発展途上国への支援活動をしている両親の姿を見たり、自宅に届く現地からのレターを目にしたりして、就学率が低く自分の生活環境と大きく違う発展途上国の現状に衝撃を受けた。「貧困地域を自分の目で見たい」と、昨年8月、東京のNPO法人が主催するカンボジアへのボランティア研修ツアーに参加。初めての海外の体験で、現地のクメール語も分からない中、18日間のツアーで農村部の小学生が置かれている現実を目の当たりにした。

 3校の小学校で話を聞いたが、いずれの校長も口をそろえて「絵本が足りない」と訴えた。図書館の蔵書は100冊以下で、絵本は使い古されて読めないほど、ぼろぼろの状態だった。


参加者から、カンボジアや大西さんの活動についてさまざまな質問が上がった

 一方、急速に水道整備が進んでいるものの、子どもたちは手洗いなどの基本的な衛生習慣を身に付けていなかった。「手を洗わずにご飯を食べたり、手で水を飲んだり。下痢で命を落としかねないのに、健康意識が低いところに課題を感じました。手洗いの大切さを学ぶための良い絵本があると良いけれど、なかったので自分で作ろうと思いました」

 このツアーなどで知り合った大学生らと団体を立ち上げ、絵本の制作が始まった。文章は大西さんが翻訳サイトを使ってクメール語で書き、カンボジア在住のメンバーと連絡を取り合いながら正確な表現に直すなどして、10回以上の推敲を重ねた。絵は団体のほかのメンバーが担当した。

 大西さんは今年7月、「目標達成のために後悔しない道を選びたい」と、長野高校から茨城県の通信制高校に転入。日中の自由な時間を使って絵本を制作したり、出版費用の資金集めのためのクラウドファンディング(CF)を立ち上げたりし、来年2月から1カ月間、カンボジアに渡航する日程を組むこともできた。

 進学先の大学はすでに決まっているという大西さん。「社会、政治、経済の三つの側面から世の中を包括的に学び、自分の活動をもっと広めていけるようになりたい」と、真っすぐなまなざしで将来を見つめる。

 CFは11月26日(日)まで寄付を受け付けている。集まった資金で、自費出版のほか、現地の小学校へ寄付するほかの絵本の購入、現地で行う手洗いのワークショップなどの費用に充てる計画。寄付はCFサイト「For Good」から。サイト内で「カンボジア」で検索。

 (問)Aspiration (メール)aspiration.picturebook@gmail.com

 記事 松井明子

 写真 斉藤茂明


2023年11月18日号フロント

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