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オールド・フォックス 11歳の選択

=1時間52分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中

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バブルに沸く台湾で 揺れ動く少年の心

 「オールド・フォックス 11歳の選択」は、1990年前後のバブル景気に沸く台湾を舞台に、市井の人々と父子の絆の物語だ。

 台北郊外で暮らすリャオタイライ(リウ・グァンティン)とリャオジエの父子の夢は、いつか自分たちの家を持ち、亡くなった母親の夢だった理髪店を構えること。そのために倹約し、内職もしてつつましい生活をしていた。

 仲の良い父子に亀裂が入る。きっかけは、貧しいことで同級生たちからいじめられていたリャオジエを地主のシャが助けたことだった。オールド・フォックス=腹黒いキツネと呼ばれるシャは、リャオジエに世渡りの悪知恵をつける。リャオジエは、シャの人生哲学に魅せられ、次第に父親に反抗的になってゆく。

 母親のように自ら針を持ち息子に合った洋服を仕立て、息子を守ろうとする愛情深いリャオタイライ。生真面目で実直な父親と、他人を傷つけても利益を優先する傲慢な男・シャ。真逆の生き方をする2人の間で、揺れ動く少年の心を繊細に捉えた脚本も手掛けたシャオ・ヤーチュエン監督。名匠ホウ・シャオシェン監督の跡を継ぐ台湾ニューシネマ世代の監督で、現代社会における人と人との関わりと共感、思いやりをテーマに作品を紡ぎ上げる。 

 映画で描かれている1989年から90年代にかけての台湾では、88年の戒厳令解除後の金融システムの変化から拝金主義が生まれ、台湾史上最大の集団型経済犯罪と呼ばれた「鴻源事件」が起きている。人々は金に振り回され、不動産投資が過熱し、大金を失う人々が続出した。

 ましてや感受性の鋭い少年にとって衝撃の大きさは計り知れない。やがてリャオジエは、損得ばかりでなく人との絆を大切に、実直に生きることの重みに気づいてゆく。心に温かさが静かに染み渡るようなストーリーと、監督がこだわった音楽に包まれた父子の物語にほっと満たされる。

 台北金馬映画祭で監督賞、最優秀映画音楽賞など4冠を受賞した。台湾・日本合作映画で、日本から女優の門脇麦がタイライの初恋の女性役で出演している。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年6月29日号掲載

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