オペレーション・ミンスミート―ナチを欺いた死体

=2時間8分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で4月29日(金)から公開

(C)Haversack Films Limited 2021

とんでもない奇策 長い間極秘の実話

 第2次世界大戦中、ナチス・ドイツ軍攻略のためにとんでもない奇策が行われた―。「オペレーション・ミンスミート―ナチを欺いた死体」は、英国諜報部(MI5)が長い間極秘にしていた実話の映画化だ。

 1943年、英国軍は、ドイツ軍に防備を固められたイタリア・シチリア島を攻略する作戦を立てた。だが、ドイツ軍に海岸で待ち伏せされていたら作戦は失敗に終わってしまう。そこで英国軍諜報部がチャーチル首相に提案したのは、「高級将校に仕立て上げた死体にギリシャ上陸計画を示す偽造文書を持たせて海に流す」という奇想天外なものだった。作戦は実行に移されるが、果たしてナチス・ドイツ軍を欺くことができるのか。

 「ミンスミート」と名付けられた作戦を指揮するのは、元弁護士の諜報部員モンタギュー(コリン・ファース)。海で溺れたように見せる死体探しに始まり、実在する英国海兵隊の少佐に仕立て上げるため、細部まで完璧に偽装する困難な任務に奔走する。

 21世紀になってMI5が機密ファイルを公開したことにより明らかになった欺瞞作戦の顛末がイギリスの作家ベン・マッキンタイアーによって出版されるやベストセラーとなった。

  この作戦の発案者として、まさかという人物が映画に登場する。その名はイアン・フレミング。「007ジェームズ・ボンド」の生みの親のスパイ小説家が戦時中は実際に英国諜報部に勤務していたのだ。フレミングの立てた作戦が、バジル・トムソンという小説家のフィクションを基に練られたというのだから、まさに事実は小説より奇なりと感服してしまう。

 青年時代からプレイボーイで鳴らし、自身をモデルにボンド小説を書いたフレミング。この映画で、諜報部員フレミングの周りにボンド小説のキャラクター、上司Mや、秘密兵器を開発するガジェット担当のQのモデルになった人物が登場しているのも一興か。

 戦争の行方を左右するのが情報の扱いと対応だ。砲弾飛び交う前線の戦いとは一味違う、頭脳を駆使した諜報戦の醍醐味(だいごみ)を描いたスパイサスペンスだ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年4月23日号掲載