オフィサー・アンド・スパイ

=2時間11分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で公開中

(C)2019-LEGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINEMA-FRANCE3CINEMA-ELISEO CINEMA-RAICINEMA

歴史的な冤罪事件 サスペンスタッチで

 19世紀末のフランス。ユダヤ人の陸軍大尉がスパイ容疑で有罪判決を受けるが、冤罪をめぐり国内を二分する大スキャンダルへと発展する。歴史的な冤罪事件として有名なドレフュス事件だ。「オフィサー・アンド・スパイ」は、ユダヤ系ポーランド人の家庭に育ち、自らもユダヤ人狩りの恐怖を経験したロマン・ポランスキー監督が、サスペンスタッチで歴史的大事件に迫った映画だ。

 1894年、アルフレッド・ドレフュス大尉は、ドイツに軍事機密を渡したスパイ容疑で有罪判決を受ける。かつてのドレフュスの教官だったピカール少佐(ジャン・デュジャルダン)は、防諜部に配属されたのをきっかけに事件を捜査。そしてドレフュスの無実を示す証拠をつかんだ彼は、証拠の捏造、文書改ざんなどあらゆる手で真実をもみ消そうとする国家に抵抗し、ドレフュスの冤罪を晴らそうと奔走する。

 この作品にはなじみの言葉が登場する。ドレフュスが流刑された仏領ギアナの「悪魔島」は、スティーブ・マックイーン主演の「パピヨン」に登場した。生きては出られない監獄の島として知られるだけに、裁判の行方にはらはらさせられる。

 重要な役割を果たすのが、ピカールが支援を求めた作家エミール・ゾラの存在だ。監督は、かつてゾラの半生を描いた米映画で「ドレフュス事件」の場面に感動し、映画化を目指すきっかけになったそうだ。

 戦時中、両親がナチのユダヤ人狩りで収容所に送られ、少年だった監督も逃亡生活を経験した。監督は、今もなお根強い反ユダヤ感情が世界情勢の不安定化を招いているのではないかと警鐘を鳴らす。

 国民の世論を操作し、一方で国家権力に抵抗する言論を弾圧し、戦争にひた走るロシアを例にするまでもなく、真実と正義を求めて国家権力と闘ったドレフュス事件から学ぶことは多いはずだ。

 ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞で監督賞・脚色賞、衣装デザイン賞など3冠を受賞した。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年7月16日号掲載