エルヴィス

=2時間39分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で7月1日(金)から公開

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華やかなステージの 裏側に隠された真実

 1977年8月16日、一人のスーパースターがこの世を去った。キング・オブ・ロックと呼ばれたエルヴィス・プレスリー。42歳という若い死に世界は驚き嘆いた。「エルヴィス」は、知られざるエルヴィスの真実をバズ・ラーマンの監督・脚本で描いたミュージック・エンターテインメントだ。

 カーニバルで呼び込みをするトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)の関心をひいた一人の青年。若い女性たちをたちまち夢中にさせるエルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)の才能に気づいたパーカー大佐は、言葉巧みに近づき自らマネジャーに収まる。売り出しに成功すると、次第にプレスリー一家を金銭で支配してゆく。その一方で新しい音楽、ロックを生み出し、音楽界に旋風を巻き起こしたエルヴィスの人気は絶頂期を迎えていた。

 「ムーラン・ルージュ」や「華麗なるギャツビー」などを手掛けたラーマン監督は、エルヴィスのイメージそのままのゴージャスなオープニングで、観客を一気にエルヴィスの世界に引き込んでゆく。

 極貧で黒人地区暮らしのプレスリー一家。教会でゴスペルを歌う日常からエルヴィスの特異な音楽性は育まれてきた。人種だけでなく音楽も差別を受けていた歴史的な背景の中で、黒人音楽のブルースと白人音楽のカントリーを融合させたエルヴィスのルーツをまざまざと見せつける。

 若者を熱狂させるロックは禁断の音楽とされ、人種隔離政策を進める政治家たちの反感で警察の監視下におかれたエルヴィス。差別に対する反骨精神と自身の魂の叫びを音楽に重ねる才能のすごさにも驚かされる。オースティン・バトラーのぞくぞくさせるセクシーなまなざし。シャイで繊細でありながら一転、圧巻のステージパフォーマンスは、「エルヴィスそのもの」と監督にいわしめ、元妻のプリシラも納得したという。

 強欲マネージャーに搾取され続けながら愛する家族のためにステージに立ったエルヴィス。華やかに見えるステージの裏側に隠された真実が次第に明かされてゆく。ギネス史上最も売れたソロ・アーティスト、エルヴィスは伝説となった。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年6月25日号掲載