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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

=2時間20分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2022A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

多元宇宙へワープ 怒濤の展開へと突入

 今、映画界で最も注目を集めている話題作と言っていいのが、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。インディペンデント(独立)系の作品ながら、米アカデミー賞で作品、監督、脚本など最多10部門にノミネートされ、先のゴールデン・グローブ賞や全米映画俳優組合賞などでも受賞した。

 中国系米国人のエブリン(ミシェル・ヨー)はこのところ頭の痛いことばかり。頑固な父親の介護のこと、反抗的な娘、優柔不断で頼りにならない夫。家族で経営するコインランドリーは赤字経営なのに国税庁の監査が入り申告のやり直しを命じられる。

役人に絞られている最中、別の宇宙から来たという夫が突如現れ、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と使命を背負わされ、まさかの戦いに身を投じる羽目になる。

 混乱するのはエブリンだけではない。スクリーンを見ている観客もまた、マルチバース(多元宇宙)へワープするたびに別の物語の世界に放り込まれ、怒濤(どとう)の展開に巻き込まれてゆく。

 この映画の成功の秘訣(ひけつ)は、まさに俳優たちの高いスキルにある。素っぴんの普通の主婦から、ある時はカンフーの達人、京劇役者、さらに大スターの女優役でゴージャスな美しいドレス姿となって周りを魅了する役柄は、ミス・マレーシア、ボンドガール、アクションスターへと躍進していったミシェル・ヨーの経歴をほうふつとさせる。

 夫役は、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(1984年)で、ハリソン・フォードとの丁々発止の演技で天才子役と称されたキー・ホイ・クァン。監査官役のジェイミー・リー・カーティスの、ここまでやるのという怪演もすごい。

 脚本・監督は、ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナートの2人。「2001年宇宙の旅」「レミーのおいしいレストラン」「花様年華」などの映画パロディーや遊び心が満載。ファミリードラマ、SFにカンフー、コメディー、下ネタありなど、変幻自在で奇想天外なストーリーでありながら、決してぶれないのが家族愛だ。一気に何本もの映画を見たような恐るべきアクション・エンターテインメントだ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年3月11日号掲載

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