top of page

アニマル ぼくたちと動物のこと

=1時間45分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で公開中

(C)CAPA Studio, Bright Bright Bright, UGC Images, Orange Studio, France 2 Cinéma - 2021

環境問題と向き合う 若い2人の世界旅行

 ロンドンに住むベラとパリに住むヴィプランは共に16歳。日頃から動物保護と気候変動問題に取り組んでいる。50年後、人類は存在していないかもしれない―。2人は、映画監督のシリル・ディオンの提案で、危機の実体に迫るために世界を巡る旅に出る。「アニマル ぼくたちと動物のこと」は、悲惨な未来を防ぐために立ち上がった2人のティーンエージャーを追ったドキュメンタリー映画だ。

 地球上の生命には「6度目の大量絶滅」が迫っている。そうした科学者の説に危機感を抱く2人は、古生物学者の元を訪ね、絶滅の原因を学び、さらに世界各地を巡り、環境問題の現実と向き合ってゆく。

 インドではビーチに流れ着いた大量のプラスチックごみに見られる汚染問題。フランスでは、温室効果ガス排出の一因とされる畜産業の実情を知るため、何万匹もの食用ウサギを飼育する畜産農家を訪れる。ベルギーでは魚の乱獲問題を知る。日本の捕鯨やイルカ漁のシーンに胸が詰まってしまった。

 法律制定に関して、自己の利益になるように議会でのロビー活動に余念がない欧州の団体にインタビューを試みる2人を無視したり、逃げるように走り去ったりする大人たちの姿のなんと恥ずかしいことか。  

 開発のために熱帯林が伐採され、生息環境の破壊によってすむ場所を失う動物たち。有名な動物行動学者で活動家のジェーン・グードルから、動物と人間の関係について学んだ2人は、実際に野生動物たちが暮らすアフリカの大自然に向かう。

 このドキュメンタリーのすごさは、映像の素晴らしさとともに、多くの学者や活動家の実践する姿が描かれていること。残酷な現実への怒りや悲しさだけでなく、再生という希望も、彼らの旅を通して見えてくる。同じ地球に生きる動物と人間が共存するために大切なことは何かを教えてくれる。

 カンヌ国際映画祭でドキュメンタリー賞にノミネート。ヨーロッパ映画賞ではヤング観客賞を受賞している。

 長野県推薦映画。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年8月3日号掲載

Comments


bottom of page