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ちょっとした日本の文化史に

箸袋コレクション集大成 和田恭良さん 自著を出版

集めた「箸袋」を前に本を手にする和田さん

 50年間に集めた箸袋は1千枚以上—。元長野県副知事の和田恭良(やすよし)さん(72)=豊野=が「箸袋からのメッセージ」(龍鳳書房)を著した。料理店や旅館などを訪れた際に集めた箸袋を基に、箸袋の歴史を調査・研究し、コレクションをデザインや材質、書かれた内容などで分類し、280枚の写真とともに紹介した。

 箸袋の起源は中国の箸を紙で包む「箸包み」の習慣にあるとし、日本では鎌倉・室町時代の武家社会で献上品を紙を折って包む作法が広がり、「ハレ」の料理では箸を紙で包むことが定着。江戸時代には割り箸が登場し、簡単に包める「箸袋」が一般に広まったのではないかと推察している。当時の箸袋は現存していないため、和田さんは国会図書館デジタルコレクションなどにあたり、箸や料理に関する膨大な絵や文献を調べ、独自にまとめた。「推測の域は出ないが、逆に想像を膨らませる研究だった」。コロナ禍で家にいた時間を利用して約1年で書き上げた。

 子どもの頃から切手や古銭など小さなものを収集するのが好きだった。箸袋は旅行先の「記念」として持ち帰っていたが、たまるとそれぞれに独自色を見つけ、面白さを感じた。「このまま捨ててしまうのはもったいない」と書籍化を思い立った。

 高度成長期、団体旅行がブームだった頃の全国の旅館の箸袋には地元の民謡を載せているものが多く、宴会で利用されたことがうかがえた。上質の折り紙型には料亭としての格があり、自慢料理のおいしい食べ方を4こま漫画で指南したものには、店主のこだわりを感じた。「小さな紙面に多くの情報やメッセージを込め、箸袋を通して客とコミュニケーションを図ろうとするのは日本ならでは。コレクション紹介のつもりが、のめり込み、ちょっとした日本の文化史になったのではないか」と和田さん。最近、戦前と昭和20年代の箸袋をインターネットオークションで入手するなど、今も興味は尽きない。

 数年前には、東アジアの古銭を紹介した500ページを超える「東亜貨幣小辞典」を著した。次は、善光寺の「お守り銭」の執筆を構想中だ。

 四六判、205ページ、1760円。平安堂各店などで取り扱っている。

 (問)龍鳳書房☎︎247・8288

 記事・写真 斉藤茂明


2023年10月21日号フロント

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